「自分は勉強が苦手だ」と思っている人はたくさんいます。
学生の本分は勉強だ、なんて言うくらい、勉強は子供時代の大きな悩み事の一つです。
しかもそれは、大人になっても『勉強がコンプレックス』となって続きます。
勉強への苦手意識が芽生えてしまうのは、一体いつからなのでしょうか。
「ぼく、おべんきょうはあんまりできないんだよな」
小学校での,就学時健康診断の日のできごとです。
職員として新入学児童の就学時健康診断の運営をしていました。
就学時検診では、入学予定のこどもたちを数名のグループにして,必要な項目を調べていきます。
学校保健安全法で行うように定められているもので、小学校に入学するにあたり,お子さんの健康状態と,能力や知識の発達状態の確認をします。
「まず,お医者さんにみんなの体が元気かどうかみてもらいまーす」と内科検診,
「次は,歯医者さんにお口のなかをみてもらいましょう!」と歯科検診,
「小さい字がどれくらい見えるかな?」と視力検査,
「小さい音が聞こえたら手をあげて教えてね」と聴力検査。
どんどん進めて,いよいよ最後は知能検査となりました。
就学時健康診断では,簡単な知能検査を行います。
知能検査というと,なにやら難しいものに感じます。
中には,何か特別な勉強をさせていかなければならないと心配になる方もいるかもしれません。
内容については触れられませんが,特別な勉強や準備などいらない簡単な内容のものです。
なのでご安心くださいね。
こどもたちには「最後は,おべんきょうのおへやです。みんなは4月に小学生になったらおべんきょうがはじまります。今日は,少しだけおべんきょうをしてみましょう。」と説明。
そうすると,ほとんどの子は
「おべんきょうするの?楽しみ!」と笑顔を見せてくれます。
こどもたちは新しいことを学ぶのが本当に大好き。
小学校にはいる=おべんきょうするという意識がこどもたちにあって,それを心待ちにしているのがよーく伝わってきます。
そんな中、一人の男の子のひとこと
「おべんきょうするの?ぼく、おべんきょうはあんまりできないんだよな」
というのです。
小学校にも入学していない子が!勉強ができないって言うの!?と、心底びっくりしました。
小学校に入る前から勉強コンプレックスは始まっている
まだ小学校にも入学おらず、授業を受けたことのないときから、勉強への苦手意識は始まっているのです。
この日の知能検査では、その男の子の発言に続いてグループ内の他の2人の子も勉強が苦手だと話しました。
小学校入学前のほとんどのこどもたちにとって、『おべんきょう』というのは、幼稚園・保育園や家庭でのひらがな練習くらいなはず。
「小学校に行って子供たちが困らないように、自信をつけられるように」という想いから行われるものです。
しかし、そのときに、「つまずいた」「分からなかった」「上手にできなかった」という思いがあるお子さん達には、自信ではなく苦手意識が植え付けられてしまうのです。
勉強への苦手意識は、自己肯定感を大きく下げてしまいます。
しかも、「勉強が苦手だ」という意識で勉強をすると、勉強した内容を忘れやすくなり、集中力も下がるし、 勉強へのモチベーションが上がりにくくなります。
つまり、「勉強が苦手だ」という意識は、本当にその子を勉強が苦手な子にしてしまうのです。
苦手意識のはじまりは摘み取ることができる!
一度苦手意識ができてしまったら、その子はずっと勉強が苦手だと思い続けるのでしょうか?
そんなことはないので絶望しなくてもだいじょうぶです。
小学校入学前後のお子さんの「勉強が苦手」という意識の素は、非常に些細なことです。
「あの字が上手に書けなかった」とか、「〇〇ちゃんに花丸の数が負けた」とか、もしかしたら誰かに「下手って言われた」とか。
勉強に対してのマイナスイメージがついてしまった部分を確認してみれば、それはほんの些細なことであることがほとんど。
些細なことで苦手意識をもってしまうのは大変もったいないことです。
『苦手意識のはじまり』を摘み取るには、その「できない」の部分を「できた!」に変えてあげるだけでいい。
苦手の元を、もう一度時間をとってゆっくりと、たくさんほめてあげながら、確実に成功する手立てをして体験させてあげることで、『苦手』が『普通』へ、そして普通を通り越して『得意』になってしまうことまであるのです。
こどもたちは、できないことがたくさんありますが、それは経験数が少ないだけ。やればものすごい早さでぐんぐん吸収していきます。
しかも、知っていること・やったことのあることには、大きな自信をもつようになります。
小さいうちに、たくさんの「できる」を積み重ねて、たくさん自信をつけてあげましょう。
その際、「できない」を残したままにしないように心掛けましょう。